我が闘争(抄訳)
『我が闘争(抄訳)』の全文民族的国境への熱求
我々はドイツにとって必要なだけの土地を欲する。しかしこれは単に大戦前のドイツの国境を快復しようと、望むこととは全然違ったものである。戦前のドイツ帝国の土地を得んとして、再び流血の惨を見るのは愚の骨頂である。何となれば、我々が欲する土地とは「ドイツ民族に必要な土地」であって、政治的な国境なんかでないからだ。
仮に舊ドイツの国境を回復し得たとして、一体それが何になるのであろうか。そのことのためにイギリスへの海岸線が近くなるわけでもなければ、アメリカの様な大国になれるわけのものでもない。ましてやフランスの政治的勢力を奪取することなど思いもよるまい。
我々は、ドイツ民族の存在のために、当然与えられなければならぬだけの土地を欲する。この目標は不変である。或る種の民族主義者は、私のこの考えに対して、「ドイツ民族のために他の民族を犠牲に供することは自己撞着であり、人権の蹂躙である」と攻撃するかも知れない。しかし私はかかる徒輩に反問する。
「如何なる国家が他に優越せる権利を以て土地を保有していると云うのか。国境とは何であるか。それは人間が勝手に作ったものに過ぎぬ。従ってそれが人間に依って変更されることに何の不自然があるか」と。
領土は天から授かったものではない。若し或る民族が、その民族の生きて行くために、より以上の土地が必要とされたなれば、それは当然与えらるべきである。人間は人間のみでは生き得ない。人と土地があって始めて民族の自立が出来るのである。しかし今日の様な時代に於ては、その必要な領土を得るためには、只剣と征服とに依るより外ないことを、充分覚悟しておかなければならないのである。