我が闘争(抄訳)
『我が闘争(抄訳)』の全文我々は武器を欲する
想うに、一九一九年にドイツ人の上に与えられたヴェルサイユ条約は、我慢出来ない残酷なものではあったが、それだけにあの条約は、ドイツにとって、もっと大きく利用されて然るべきものであった。あの条約を突きつけられた時、我国の政治家達が茫然自失なす処を知らぬような態度を取らずに逆に之を国民に示し、この条約の不正と不義を摘発して国民に訴えたなれば、全ドイツ人の憎悪は火と燃え鋼鉄と凝って、
「我々は武器を欲する?」
という巨大な叫びに迄昂揚させ得たに違いない。然るに我々に指導者は、このことに就て何一つなさなかったのだ。否なし得なかったのだ。
こんな状態と時期の下で、ドイツが何れかの国と同盟のことに就て考えることは不可能である。大戦に於て我々が敵として戦った国々の人々は、まだドイツに対して憎悪を持っている。弱体ドイツ、憎まれているドイツが、同盟の可能性について希望を持つことが出来る時期は、ドイツ人の自己保存精神の復興が再び現われ、真の性質を啓示出来るようになった時に始めて許される。つまり我々が安定した政府を持った時、始めて同盟を実現する時期が到来するのである。