我が闘争(抄訳)
『我が闘争(抄訳)』の全文多くの敵を持つな
今日の私は、失地の回復ということは、議会主義的なお喋べりや何かで出来るものではなく、飽くまでも剣と血の厳しい闘争力によるより外ない、という考えの下に行動しているのである。
しかしチロル地方(注―独伊国境の舊独領、イタリアの領有する処となっていたが、近年独伊同盟によりドイツに返還された。尚ナチ党の最初の綱領には、この地の奪還という項目が上げられていたが、独伊接近の歩を進めた一九三〇年の改訂綱領からは、この項目は除外されている)を、この際戦争に依って奪還を計るということは不可能であることを言明しなければならない。何となれば、ドイツそのものが只今ではまだ外国の支配下に悩んでいるからだ。而して七千万のドイツ人の心には、まだ充分なる国民的熱情が醸し出されていないからだ。こんな状態にあって七千万のドイツ人が苦しんでいる時、南チロルに住む二十万の同胞を獲得するために、戦争に訴えるなどとは、寧ろ犯罪に属する誤った行為である。
我々はその目的の達成を急ぎすぎて、大戦前のドイツの様に、多くの敵を持つことは厳に警戒しなければならぬ。敵は最大のものを選べばよい。最大の敵を遂に陥らしめ、それに対して破壊のための全力を傾けることが最も賢明なる方寸である。