我が闘争(抄訳)
『我が闘争(抄訳)』の全文英独に水をさすもの
英国との場合は既に述べた。
然らばイタリアとドイツとが、何の故に同盟を結び得る可能性があるか?
一言にしてイタリアはフランスの強大となることを喜ばないからである。由来イタリアの生命線は地中海にあり、地中海上の征覇そのものがイタリアの安泰を招来する。過ぐる大戦に於て、イタリアが連合国側へ参戦したのは、フランスや英国を強力にするためでもなければ、ドイツを倒そうとする目的でもなかった。彼等はただ、オーストリアからアドリア海を取り戻したかったに過ぎない。然るにフランスの勢力が増大すれば、当然それに従って地中海に於けるイタリアの安全感は脅かされざるを得なくなる。この国がフランスの隆盛を喜ばない点は、一にかかってこの点に在るのである。
斯の如く、イギリスとイタリアとは、ドイツの存在と何等の撞着もない必要な条件を持っている。彼らの利害は、可なり多くの点で我々の利害と一致している。この見地から私はこの二の同盟国を挙げたのである。
しかし之は、少なくとも現在に於ては、私だけの一方的な考えに過ぎない。と云うのは目下のドイツの国家組織を見、臆病者と吸血鬼のマルクス主義者共に壟断せられている無力なドイツを見るなれば、どこの国がドイツと同盟を結ぼうなどの心を起すであろう。
我々は我々の考えを捨てるものではない。しかし我々の宣伝がその仕事を終った暁に於て、始めて所論のとおり同盟の締結を実行に移すことが可能となる。
この場合今一つ考えて置かはばならないことがある。それは我々の正面の敵たるユダヤ人に対する心構えである。イギリス人は最早現在以上ドイツが弱体化することを望んではいないが、ユダヤ人は別である。ユダヤ人だけは、依然として我々を打倒することを終生の目標としていることを忘れてはならない。
ユダヤ人はドイツ撲滅扇動者中の最大の存在である。彼等はこの目的のための、あらゆる攻撃方法の発明者だと云ってよい。戦争中に於ても既に然りであった。彼等の金融機関とマルクス主義的諸新聞は、飽くなき策謀の手を廻して、多数の国をドイツの敵として起たしめることに成功した。
今日の彼等が計画していることは、ドイツ人の感情を刺激して、イギリスと憎むように仕向けることである。これは云うまでもなくドイツと英国との同盟を妨害せんとする意図から出発しているものに外ならない。このために彼等はまことしやかな顔をして「ドイツは植民地を奪還せよ」と叫んで我を扇てようとする。若しもこの扇動に乗ぜられて、我々が起ち上ったとしたらどうなるか。ドイツの以前の国力と領土とを奪還するために暴力行為が行われ、ブルジョア階級がこれに引きずられて、本気にこのことを要求し出したとしたらどうなるか。我が国内に居住するユダヤ人は、頃合を計ってこのドイツに起きた問題をこっそり英国内のユダヤ人に売渡すに違いない。そしてこれを直ちに反ドイツ的な宣伝に利用し、英独の関係を悪化させる責め道具に使うに違いないのである。植民地や海上権の奪還は勿論忘れてはならないことだ。しかしそれには時機が必要である。我々は先ずドイツ人のドイツを再建しなければならない。このことを忘れて、彼等ユダヤ人の策謀に乗ぜられたなれば、それはドイツを再建する代りに、現在より以上惨めなドイツを現出する結果となる。