我が闘争(抄訳)
『我が闘争(抄訳)』の全文力の剣に依る失地回復
祖国の政治的な力と自由とを回復するに就て、先ず行われなければならぬことは、大戦によるドイツの喪失地を奪還することである。しかしこの場合その失地が持っている利益を中に入れて奪還運動を起してはならない。失地の回復は圧迫され通した人民の願望に依って実現されるものではない。これを遂行し得るものは、戦争前の共同国家の中に残存している最も偉大で自由な部分の力のみである。
要するに力の剣に物を云わさなければならない。力の剣のみが失地を共同国家の中に取戻すことが出来る。願望や抗議だけでは何物をも得ることは不可能である。従って指導者は先ず国民をしてこの力の剣を鍛錬させることに力を傾ける必要がある。そしてそのことをなす任務の一部分として、指導者は同盟者を求めなければならなくなる。
大戦前に於けるドイツの外交政策が失敗であったことは、既に前にも言及した通りである。ドイツ帝国は商業や植民政策に據るよりも、先ずヨーロッパ国内で新しい土地を獲得することに重点を置くべきであった。商業や植民に依って英国を敵に廻した結果はあの大戦になってしまったのだ。それよりも寧ろ英国と同盟して、ドイツ国力の強化を計るべきであったのだ。或は又四五十年の文化活動を一切犠牲にする覚悟で、世界の如何なる国も歯の立たないような強力な軍隊を作り、新領土の獲得を目ざすか、この二つの中の何れかを採るべきであった。