我が闘争(抄訳)
『我が闘争(抄訳)』の全文大戦後のドイツの盟邦
戦後には不誠意のみ
大戦後に於けるドイツの外交に就て考える。敗戦後のドイツ帝国の外交は、戦前と比較すれば更に一層なっていなかった。戦前には混乱が目立っただけであったが、戦後は不誠意の固まりになってしまっていた。革命をやってのけた政府の連中は、ドイツを自由に、そして強力にしてやるために、他の国と有利な同盟を結ぼうなどという考えを少しも持ち合わせていなかった。
ドイツの指導階級と、実際にはそうではないが自分ではそうだと思い込んでいる議会主義者と、何等の考えを持たぬ羊のように温順なドイツ大衆とを、はっきりと区別して考えておくことが、この際特に重要である。指導者たちは小怜しくも、大衆が何を欲求するかということをよく知っている。議会主義者達は何れも腰抜けばかりであるから、易々諾々と指導者の後について行く。そして大衆は尚更愚昧であるから、黙々と之等に服従し引きずられて行く。これが現在の姿だ。
ナチ党が一般から認められていなかった時代には、ナチ党の支持者達の間に於ても、外交問題はそう重要に考えられなかった。何故かと云うに、ナチ党が第一に為すべきことは、強力なる新ドイツを先ず造らねばならぬということに全力が傾けられていたからである。ドイツを崩壊させた原因を取り除き、その崩壊を利用して肥った奴輩を打倒すべしとなすのが第一の目的だったからである。
しかしナチ党が再建され、その勢力が前にも増して拡大強化されるに従って、我々は対外関係にもハッキリした。そして確乎たる態度をとることの必要を感じて来た。指導的な一つの原因を守り、その原則に従って強力な外交陣を張らねばならないと思うようになった。
この意見の決定ということには、ドイツが今日に於て救われるか、それとも将来に於て救われるかの重大な意義が掛けられている。しかし一歩を誤れば、この原則が我々を或いは害するかも知れなかった。
何れにしてもドイツの今日の外交政策の目標は、世界大戦に依って見る影もなく失われてしまった国家の自由を、一日も早く取り返すことでしかない。