我が闘争(抄訳)
『我が闘争(抄訳)』の全文優れたるドイツ官吏
序に今一つ、ドイツの持つ偉大なるものとして、我々はドイツ人の官吏を挙げなければならない。
ドイツには実に優秀な官吏団があった。この官吏団の為した功績と治績とは、正に万国に誇って然るべきものである。大戦前に於いて、最も組織の行き届いた、最も治績の挙がった国はドイツを於いて何処にもなかった。例えば鉄道一つを見ても、何処の国にドイツと肩を並べ得るものがあったであろうか。政府が健全であり、この官吏団が優秀であり、軍隊が堅固である限り、祖国は無限の発展と躍進とを約束せられる運命にあった。
然るに、革命は一切之等を瓦解せしめてしまった。世界に誇る高度の能率は破壊され、国民の能力は次第に愚劣極まる党派性へと歪められ行ったのである。
掛かる状態になるまでには、拭くべからざる権威が国家に存在していた。それは議会や裁判所などと云う外形的な機構から生まれたものではなく、カイゼルへの国民の絶対的な信頼、国家の方針に対する国民の広範囲に亙る信頼が、自ら相寄って形成した所の魂の産物であった。
想うに政府とは、つづまるところ之を分析すれば、政府それ自身が優秀であるべきこと、国民に対して寸分の偽りをも持たぬこと、国民の利益の正しき代表者であるべきことを国民が信頼し得ることこの三つを具備することに依って成立する。三つの中の何れかを欠くものは既に国民の信頼に背くものであり、政府のそのものの弱体を物語るものである。況や圧制に依って政府が存在し得る理由はどこを探しても見当たり得る筈がない。
結論として私は、真の国民生活とは、種族及び民族の自己保存並びに発展の推進力の表現以外の何物でもないことを断言する。